INTERVIEW長門で働く方々の声

INTERVIEW【対談】長門市職員 × エグゼクティブプロデューサーが語る、地方創生のリアル。長門市にある「価値」の再定義と持続可能なまちづくり

お話を聞いた人

長門市 企業誘致まちづくり推進課松岡 裕史 さん

ReBORN株式会社二見 志津雄 さん

人口減少が懸念される長門市において、魅力的な仕事をつくり出すための「企業誘致」。今回は、長門市役所の松岡さんと、外からの視点で企業誘致業務をサポートするReBORN株式会社の二見さんに、地方における企業誘致の難しさや、長門市が持つ本来の「価値」、そしてブームに終わらせない持続可能な未来に向けたアプローチについて語っていただきました。

CHAPTER01
逼迫する地域情勢と「魅力的な仕事」づくりへの挑戦

長門市の現状と、企業誘致の難しさについて語ります。都会から離れた「地方」というロケーションの不利を乗り越え、外からの視点で見つけた長門市ならではの魅力と、多様な選択肢を生み出す取り組みを紹介します。

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CHAPTER02
ひとを動かす“想い”と、長門市にある『価値』の再定義

「困難だけどやってみる」という長門市の熱意が人を動かす背景に迫ります。また、外部のリソースを活用しながら、長門市に元々ある歴史や文化といった「コアバリュー」をどう引き上げ、ブランディングしていくかについて語り合います。

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CHAPTER03
ブームを作らない選択、多様な働き方で持続可能なまちへ

一過性のブームではなく、コツコツと価値を積み上げることの重要性を共有します。働き方が多様化する現代において、通年で様々な暮らし方・働き方ができる持続可能な長門市の未来像について展望します。

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CHAPTER01

逼迫する地域情勢と「魅力的な仕事」づくりへの挑戦

逼迫する地域情勢 模索の企業誘致

(二見)
私は2024年の動画にも出演しているのですが、ReBORN株式会社で企業誘致の業務を委託されていますプロデューサーの二見です。
松岡さんはずっと長門市で暮らされているのですか?

(松岡)
市役所のキャリアが20年ちょっとぐらいですね。大学が広島で生まれは山陽側なので、長門市歴は20年ぐらいになります。

(二見)
僕は神奈川県の藤沢市生まれで、30歳ぐらいまで鎌倉市に住んでいました。それ以降は東京に移って、人生の半分くらいは東京の真ん中に居るんですよ。

(松岡)
そうなんですね。

(二見)
最近はコロナ禍の影響もあって、藤沢市ににまた人が増えて少し活況なのですが、長門市はそこの部分が厳しいじゃないですか。
僕はマーケッターなので数値から見ると、2035年には長門市の生産労働人口が1万人強になってしまうという予測があります。今、人口も3万人を切っている中で、「東京から仕事と人を持って来られたら」という企業誘致の発想はすごく分かるのですが、実際にやってみてどうですか?

(松岡)
IT企業を呼ぶことに加えて、過去を振り返っても、なんとか企業を連れてくる動きはずっとあると思うのですが、やはり簡単ではないですね。

(二見)
ええ、そうですよね。

(松岡)
人口が減ってきている中で、経済情勢や社会情勢も変化していますから、単純な話ではないと思っています。
特に私は観光行政が長かったので、どうやったら地方に人を呼べるかという点で、「長門市です」と言ったところで、東京や大阪、福岡と比べても伝わりにくいと感じています。
そういった意味での難しさはありますが、しっかりその地域に根付いているもの、長門市にしかないものは確実にあると思うんです。
なので、そういうところを共感や共有してもらえる輪が広がることで、人や事業者が結びついていくといいなと漠然と感じていますね。

選択肢を増やす”魅力的な仕事”づくり

(二見)
我々受託側としては「IT企業の誘致」ということで動いているのですが、IT企業の定義って難しいですよね。

(松岡)
確かにそうですね。

(二見)
2024年で言うと、進出企業のジャンルはバラバラです。
印刷DXのVisual Marketingさん、WEB制作や放送機器メンテナンスのMagicPlusさん、ネットを活用して高級貸切別荘を手掛けるBlueOrderさん、台湾から高齢者向けヘルプデスクの実証実験に来るDynaLabさん、そしてITコンサルや合宿形式のプロジェクトを行うAPIコンサルタンツさんの5社です。

(二見)
ただ、5社ともITを使わない会社は無いですし、明らかに「ショーケースが欲しい」「集中してやりたい」といった明確な目的があって入って来ています。
IT企業に限らず、こういった企業を少しずつ呼んでくるのもありなのかなと思うのですが、そのあたりはどうお考えですか?

(松岡)
おっしゃる通り、IT企業の定義は難しいと思います。情報通信に限らず、技術やサービスなど色々な形で生産性の向上等に取り組まれている事業者であれば、それもIT企業だと思います。
それに専念していなくても、色々な事業を展開されているところが対象でも良いと私は思っています。

(二見)
少しずつ市側も動きながら、試行錯誤している段階ですかね?

(松岡)
そうですね。
IT拠点施設を整備して企業誘致に取り組むそもそものきっかけは、市内の高校卒業のタイミングで『魅力的な仕事を長門市でどう作っていくか』という課題への対策の一つなんです。

(二見)
なるほど、若い世代の仕事作りですね。

(松岡)
はい。通信に限らず技術を使いながら色々なジャンルで事業展開ができるということは、それだけ地元にとって選択肢があるということなので、今動き出している取り組みは良い方向に向かっていると思っています。

(二見)
今、長門市で辛いなと思うのが、高校以降の教育機関が無いというところですよね。

(松岡)
それは大きな課題ですね。

(二見)
ただ一方で、AIの普及などで求人ニーズが変わり、最近は「大卒ではなくても、高卒から自分の社内で教育したほうが良い」という風潮も出てきています。そうすると、大学がなくてもいけるのではないかと。
学歴を気にせず、地元企業や進出企業同士で独自の教育システムが持てれば面白いと思うんです。そこが僕個人の次の課題かなと思っています。

輪を広げる”外”からみた長門市の魅力

(二見)
実は長門市への企業誘致の話って、会社での立ち話から始まったんですよ。

(松岡)
そうだったんですか。

(二見)
たまたま知り合いの繋がりから、実際に長門市に行ってみて河野課長と俵山温泉で出会って「何とかなりませんか?」からスタートしているんです。
最初は「えー?」と言いながら始めたのですが、やってみると面白くて。

(松岡)
面白かったですか(笑)。

(二見)
ええ。僕は本当に東京の真ん中に住んでいるのですが、東京から長門市に来るとすごくよく眠れるんですよ。

(松岡)
眠れる、ということですか?

(二見)
皆様そうおっしゃるのですが、脳を休めることができるというのはすごく大きいです。
長門市に来るとワーケーションっぽくなるんですよね。都会は目や耳から入ってくる情報ノイズがすごく多いのですが、長門市にはそれが無いので。

(松岡)
なるほど。

(二見)
実は、帰った後のアウトプットが良いんですよ。だから特に制作系をする人には良い環境ですよね。余計な情報が入らなくて、集中できますから。

(松岡)
二見さんは普段東京にいらっしゃるからこそ、長門市に来ると視覚的な情報も含めてリラックスできるというのは、今言われてハッとしたところです。
私は以前、長門湯本の温泉街の再開発を5年担当していたのですが、温泉街はよく「文豪が旅館に籠って作品を書いていた」と言われますよね。

(二見)
ええ、似たようなことかもしれないですね。

(松岡)
長門湯本も川が流れていて情緒があり、温泉に入ってリラックスする中で筆が走るというか。良い作品を作ろうと思うと、良い環境に居たいというのはあるのでしょうね。

(二見)
山中教授も「iPS細胞はお風呂の中で思いついた」とおっしゃっていましたし、ONとOFFの切り替えが上手くできることが大きいのでしょうね。

(松岡)
二見さんたちが「長門市に来ると良いアウトプットが出る」とおっしゃっていただいたことは、一つの大きな強みだと思います。
そういった良いアウトプットが出ていること自体が宣伝になり、進出企業の方々がSNS等で発信してコミュニティが広がっていくと非常に良いなと思いました。

CHAPTER02

ひとを動かす“想い”と、長門市にある『価値』の再定義

ひとを動かす”想い”寄り添うためにどう向き合うか

(二見)
最初は企業誘致・まちづくり推進課に異動と言われて驚きましたか?

(松岡)
驚きましたし、不安でしたね。
地方という圧倒的に不利なロケーションで企業を連れてくるのは非常に難しいことですし。いま整備中のIT拠点施設を埋めるということが目的ではありませんが、『市内で魅力的な仕事をつくっていく』という目的がなければ、長門市の経済的な発展や地域の豊かさを維持していくことはできません。
やろうとしていること自体がすごく難しく不安でしかないですが、「長門市の将来のためにやっていく」という想いを持っておかないとやれない、というのが正直ありました。

(二見)
矢作先生のセミナーの中で印象に残っているのが、「アントレプレナーシップ(起業家の資質)とはマインド(EQ)の問題だ」というお話です。やはり“想い”がないと人間は動かないですよね。

(松岡)
EQ、大事ですね。

(二見)
1人の人間の“想い”が2人、3人と呼んできて、それが100人へと指数関数的に広がっていきます。
今「困難だからやめる」ではなく「困難だけどやってみる」というのはすごく大きいです。
最初は「えー、長門市に行くの?」と言っていた僕が一番来ているのは、やはり市の方々の想いや気持ちをすごく強く感じるからで、そこが僕を動かしているところが大きいんですよね。

(松岡)
人が人の心を動かすには、やはり“想い”がないと動きませんね。
我々がやろうとしてることに共感していただいて、長門市ならということで来てくださる外部の方々に、もっと気持ちよく仕事をしてもらうためにはどうしたらいいか。そこを考えて、一緒に汗をかく部分は汗をかいて動いていくことで、継続していけると思っています。

(二見)
行政はどうしても異動があるから、継続が課題になりますよね。

(松岡)
おっしゃる通りです。しかし企業が3年で交代するわけではないので、どうそれを引き継ぎ、組織としてどう取り組んでいくか。
異動がありつつも皆様と常にコミュニケーションを取り、“想い”で応えていくということを続けていかなければいけないと思っています。

(二見)
今はSNSの時代なので「共感性マーケティング」が非常に大事です。
若者たちも、今は大企業に就職したいという人が減っていて、ある程度頑張っている企業で苦労しながら挑戦しているところに就職したい、という人が増えていると聞きます。

(松岡)
チャレンジしてみたいという考え方が多様になってきているんでしょうね。
そういった意味では、地方というロケーションも不利ではないかもしれないです。

(二見)
そうですね。

(松岡)
この厳しい環境で地元企業がどう事業を続けてこられたか、外部から来た方達がどのように課題を解決しているか。ここで一緒に困難があっても最後までやりぬくということを実践して、我々も万全のサポートをしますので。
「ぜひ長門市で一緒にチャレンジしませんか」と、若い方に呼びかけていきたいですね。

ひとを動かす”想い”寄り添うためにどう向き合うか

(二見)
2024年の山口県全体のIT企業誘致件数は年に6〜7件という中で、昨年度長門市が進出協定を結んだのは4社でした。
新幹線や空港が無い山陰地区のコンディションが悪い中でこれは奇跡的な話で、ある意味でイノベーションが起きています。

(松岡)
それはかなりインパクトのある数字ですね。

(二見)
ええ。ところで『ブランド・エクイティ』という言葉を聞いたことありますか?

(松岡)
ないですね、ブランド・エクイティですか。

(二見)
ブランドをつくるだけの資本のことです。
今あるコアの部分に、我々のような周りの企業が入ってくることでエクイティが増え、ブランディングが変わっていくはずなんです。
どういうブランドにしていくかを皆様で話し合って、それが明確に言えるようになれば強いですよね。資本とは太らせていくものですから。

(松岡)
なるほど。人を呼び込む地域のブランドは、昔からそこにある資源や歴史、文化の上で成り立つものだという考えがあります。
なぜこの地域は製造業や水産系の会社、旅館が多いのか。なぜ農業高校や水産高校があるのか。
長門市は元々捕鯨が盛んで、天然の良港でかつて魚がたくさん採れていたという背景から、いま練り物・養鶏業などが発達している歴史があります。

(二見)
そういった歴史的な背景ですね。

(松岡)
はい。そういった歴史を少しずつ紐解いたうえで、IT拠点施設というハコを使って、進出企業と地元企業が手を組んでディスカッションする。
そして、今ある価値を形にして外向けに発信していく流れを作れるといいなと思っています。
地方は何もないという訳ではなくて、スキルやノウハウといったリソースが足りていないだけだと思うんです。
無いものは外から取り入れるか自分で育てるしかない。外部の力をお借りして、今その地域にある価値を引き上げ、エクイティをどんどん積み上げていくことが重要ですね。

CHAPTER03

ブームを作らない選択、多様な働き方で持続可能なまちへ

ブームをつくらないという選択

(二見)
今回僕が業務をやらせていただいている中で、一つだけ気をつけていることがありまして。
「ブームをつくるのはやめよう」ということなんです。

(松岡)
ブームをつくらない、ですか。

(二見)
はい。昔のF1ブームもそうだったのですが、アイルトン・セナのようなスター選手がいて、そこに中嶋悟さんが参戦をして珍しかったから人気になったものの、その後に続くエクイティが創れていなかったため、ブームになって終わってしまいました。

(松岡)
メディアに取り上げられ爆発的に伸びるというのは魅力的ですが、そもそも続かないようなヒットの仕方をするとブームで終わってしまいますね。
続けられる中でどう緩やかに伸ばしていけるかが、取り組みの“本筋”だと思います。大きな成果を急いで求めていくのではなく、コツコツとした地道な取り組みを、我々が全力で総力戦で応援していく体制をとっていくことだと思います。

(二見)
経産省のデータで、日本のGDPが下がるという予測があります。
でもGDPは給料×人口ですから、頑張れば一人当たりのGDPは上がり、一人当たりの幸せ度は上がるはずなんです。

(松岡)
なるほど。

(二見)
お金の価値にならない生活の充足度も含めて、長門市主体で仕事をするのも良いし、東京と両方で仕事をするのでも良い。
多様な働き方の中でいろんな人が集まってきてくれると良いですよね。

(松岡)
働き方が多様化する中で、先日の打ち合わせでも「製造業などで通年で人を確保するのが難しい場合、繁忙期ではない期間は違うところで働ける仕組みがあると良いのではないか」という話が出ましたね。
まさに長門市でそういったプラットフォームができれば面白いですし、長門市で通年で色々な仕事・働き方・暮らし方が出来るというのは非常に魅力的だと思います。

(二見)
2024年のDXセミナーでも「人材のミスマッチをエリアで解消しよう」という話が出ました。こういう仕組み作りは、東京だと交渉先が多すぎてやりにくいんです。
だから、まずスモールスタートで一個成功のモデルが出来れば大きいですよね。

(松岡)
大きいです。
長門市は企業の数がある訳ではないので毎年たくさんの成果を生み出すのは難しいですが、外のリソースから力をお借りして違う発想を取り入れ、まず一つロールモデル(事例)を作ることが、「長門市の価値」を伝える一番の力になると思います。

(二見)
確実にそこに近づいていますからね。
セミナーの中でも「長門市の皆さんに自信を持って欲しいです」と伝えています。市を良くしたい、事業を伸ばしたいという想いに対しては、ぜひ自信を持って進められればなと思っています。ぜひよろしくお願いします。