INTERVIEW長門で働く方々の声

INTERVIEW僕らは自分自身に問い続けないといけない。この街に何を残していきたいのか。ここにしかない価値とリゾートの形がある。

お話を聞いた人

油谷湾温泉ホテル楊貴館岡藤明史 さん

ホテル楊貴館の紹介

油谷湾温泉ホテル楊貴館の岡藤と申します。創業は今年で51年目になります。
宿泊39ルーム、宴会場・レストランのある宿を経営しております。

地元にとってどういった存在のホテルか

来られた方の人生で大切なところに関わらせていただく。そんな機会が多く、宿冥利に尽きるなと常々感じております。
ここは棚田をイメージした山口の日本酒25酒蔵をディスプレイした空間になっておりまして、西の下関から東の岩国のお酒を並べています。山猿の特別純米酒は長門市の穀良都というブランドのお米で作られています。

代々受け継がれてきた想い

もともと「旅行会社に頼る旅館経営をやめよう」ということを父や母、先代・先々代がよく言葉にしていたんです。これは決して旅行会社がいいとか悪いとかではなく「お客さまをもっと見て関わっていこう」というのを大切にしていた言葉だと僕は思っています。なので来ていただいた方にかゆいところに手が届く、そんなおもてなしができる。

周りには自然がたくさんある。ないものを言うのではなくてあるものを生かしていく。人もそうで、いわゆる一流の世界最高峰のおもてなしよりも、長門市らしい方言「よくきしゃったですね」というような「おかえりなさい」の気持ちでお客さまに関わっていこうというのは先代からずっと言われていましたので、今も引き継がさせていただいていることに感謝しています。

接客で意識していること

まず長門市を訪れてみよう、この地域と関わってみよう。その入り口になる観光はすごく大きくて。もちろん宿泊だけでなく日帰りで来ていただいたり、たまたま立ち寄ってこの景色を見てその地域の方と話をしたり。これが実はすごく大切な第一歩になります。

なので我々観光に関わらせていただいている人間からすると、そのスタートを失敗してしまうと今後その方とこの町の関わりが一気になくなってしまう可能性があると思うんです。お客さまからするとすごく大事な一日が我々からしたら日常と錯覚するんですけど、そうじゃないよと。お客さまの大切な人生と関われる、そんな瞬間を我々は毎日生きている。だからその瞬間を大切にしていこうね。ということをスタッフとも日々共有しています。

家業の観光業を継ぐと決めた気づき

もともとここで生まれ育ち一度福岡に出て5年後に戻ってきたのですが、ポジティブな気持ちで戻ってこれたのは外からこの町を見た時に自分が住んでいた時と違う魅力に気付けたというのが大きいです。福岡も2時間圏内なのでいつでも帰れるんですがやっぱり一回出ると離れてしまって。ふとした瞬間に「自分の故郷(ふるさと)だったらこういう景色があったな」とか「会社の帰りに夕日見れないんだ」とか。天気がいい日はすごい夕日を見ながら学校から帰ってきたりしていたんですが、あれって私はある意味すごい体験をしながら生まれ育ってきたんだなと。そして自分が観光という価値があるものを伝える役割に回れるということに気づきました。これは早く帰らないとあとで後悔してしまうと。それが一つですね。

母が伝えた「覚悟」の意味

骨を埋める覚悟で福岡に行ってこいと母に言われたんですけど、それは帰ってこないでいいよということではなくて。そういう覚悟をしないと行った先の会社で何も学べないし迷惑をかけるから骨を埋める覚悟で行って、その先の人生はあなたの自由に決めなさいと。帰れと言われて帰ったら言い訳を作ってしまう。そうじゃなくて、やっぱり自分はこの町で骨を埋めたいんだって思いで帰ってくればどんな困難が来た時にもそこから逃げずに立ち向かえる。なぜなら自分で決めたからと。それは母親には感謝ですね。

新天地「AMANA」誕生の経緯

ここも油谷湾の一部なんですけども、油谷湾って実はすごく穏やかな海なんです。風や台風が来ても波が上がることがない。すごく特徴的な海なんですね。この場所でこの海風と鳥の声と景色、こういったものを何か新しい形で来ていただく方に伝える場所を作れないかなということで滞在型の宿泊施設を作りました。海側の棟と2階建てのちょっと空が綺麗に見える屋上付きの棟が7棟あり、違う楽しみ方を提供できればいいなと思っています。

「AMANA」は天に凪と書きます。もともと「凪」という言葉は入れたいと思っていました。この穏やかな海を象徴する言葉を入れたいなと。向こうの半島は向津具(むかつく)半島って言うんですけど、この半島と空の時間によっての移ろいを見ていた時に、これは海だけじゃなくて半島と里山と空、この3つが織りなすものが長門市の魅力だと思い、空と海とどちらも入る言葉で天に凪で「AMANA」という名前になりました。

今後の展望

全く新しいことをするというのはその時代のニーズ、変化していく環境、それから0から1をつくる産む苦しみがあるのはもちろんですが、ここが完成して終わりではなく常に育っていくそんな場所にしていきたい。今回スタートを切ったところで、始まったばかり。この油谷湾という一つの地域資源をここからいろんな形でお客さまに提供できればと思っています。もちろんゆっくり過ごしていただくだけでもいいですし、アクティビティがあったり人と関われたり食だったり、そういったものを今からどんどん地域の皆さんと共に育てていきたいなという思いがございます。

ここにしかない価値

音すごいですよね。鳥の声とちょっと波の音と風の音。もうそれ以外ほとんど聞こえない。これは湖ですか?とよく言われるぐらいの景色なのでやっぱりあんまりないんだろうなこういうところ。で、ここは実は2本の大きな川が流れ込んでいる海なんですね。ということは実は山の恵みがすごく入ってくる海で、それで海草も育ち、魚も育ちます。我々の恵みとなる自然という象徴でもあります。我々が観光として消費するのではなく一緒にこの自然と共存していく。そういう形を作りたいと思っています。いわゆるリゾートというよりは、この手つかずの自然を残しながら、これはすごく価値のあるものだとお客さまに楽しんでいただく。そういう新たなリゾートにしたいです。

残していきたいもの

僕たちは「責任世代」とよく言われます。今からこの町とか日本とかどうしていきたいかっていう人からすると、自分たちが何を残していきたいかと思うのは自由じゃないですか。だから僕らは自分自身に問い続けないといけないなと思っています。「この町に何を残していきたいか」これは長門市はもちろん全国各地がそうだと思っていて。どこの地域にも素敵な物語とか素敵な歴史があって。それは有名か有名じゃないかで全然違うと思うんですよね。

みんな知らないけど自分たちにとってすごく大切で、残していきたいと思うものが全国にたくさんあると思っていて。長門市もまさにそうなんですよね。だから私はこの町に育ってこの地域といろいろ触れ合う中で沖縄やハワイなどのリゾートとは違った、ここにしかない価値と違うリゾートの形というのがあるということを残していきたい。
ここに暮らす人の温かさや食文化のおもてなし、そういったものも残していきたい。今、自分自身がこの町で10年先20年先まで残していきたいものは何か、今問われているところだと思っています。

INFORMATION

油谷湾温泉ホテル楊貴館

住所
〒759-4505
山口県長門市油谷伊上10130番地
TEL
0837-32-1234(代表)
FAX
0837-32-1069
URL
https://www.hotelyokikan.jp/